結婚と出産を強く結びつけた結果の不妊治療と、その結果としてのスーパーママ。
凍結した卵子を解凍して体外受精をして妊娠、出産したら、なんか普通の親と違う気持ちになりそう。
これが卵子凍結保存をしたくない女性からのひとつの意見。
どうなるか分からないから、怖い、と。
なんかわかる。ただでさえコウノドリ(ドラマ)みて、出産は奇跡やあ〜、とか思ってるから普通に考えて、何かしらの”テクノロジー”に頼るのは怖い。
残念ながら、実際に解凍して出産まで至った方は世界にまだ数えるほどだとされているので、直接的なリサーチに基づいた回答ができないがIVF(体外受精)の例を少しみてみる。
イランの研究チームが体外受精をして出産した女性への調査をみると、”Super-mothers”という言葉が使われていた。
the researchers labelled "super-mothering" - the way that the experience of motherhood was intensified as a consequence of having lived through the difficulties of conceiving.
妊娠までの道のりが困難だったが故に、結果として母としての気持ちがかなり強化されており、スーパーママさんになっている、という報告。
とにかく何か問題がないか、今後の将来大丈夫か、という不安にものすごく駆られているとのことである。そりゃそうだと思う。もちろんリスクもあるわけだし、健康に生まれてきてくれたらくれたで、”こんなに苦労したんだから”の感情が強まることは特にセオリーなど考えなくてもわかる。
Mohammadi and her colleagues explain how in Iranian culture there is a huge pressure on married women to have children
私が気になった点はこっちだ。
”イランは文化的に、結婚している女性は子供をもつ、という強いプレッシャーがある”
これがIVFを”してまで”産むことになるらしい。
日本と似ていないだろうか?
親族構成に関する本を読んでいると
家父長制度が強く残っている文化がある国は基本的に結婚と出産が密に結びついている、とよく言われている。日本ももちろん家父長生ベースで、”家父長制=父、大黒柱、偉い⇨母、子育て、家事”。確かに友人の声をよくよく振り返ってみると、
「いやー、今結婚しても、いま子供産めないし」
「今結婚してもすぐ遠距離になるのわかってるから」
これは結婚=子供がリンクしていること、結婚したらそれなりのタイミングを産みたい、もしくは産むものだと思っていること、が無意識的な前提になっており、この前提があるからこそ、晩婚化、ひいては晩産化が進んでいる一つの原因である。
晩婚化に巻き込まれていなさそうなキャリアウーマンたちの言葉は
”んー。子供はすぐには産めないけど、この人と一緒にいたいからタイミング的にここで結婚だけしようと思っている”
”だけ”?
だけ?結婚は出産とセット売りなのか?
無意識にこう言っていることを考えると、本当に日本文化の根強さを感じる。。
恐るべし無意識。
イラン同様、子供を持つことに対するプレッシャーは日本でも大きな要素であり、不妊治療者の罪悪感を引き起こしているという。そして不妊治療の先にはsuper motheringになっている女性と同じような色んなプレッシャーと戦わなければいけないかもしれない。
おのおの事情はあるし、一概には言えない議題ではあるけど、私の最近の観察所感としては無意識に、”文化”とか”常識”か”なんとなく”に縛られているような発言をしている女性も多いように見える。
無意識のものを意識に引きずり出すことで、当然だと思われていること、思っていることをもう一度見直すことで新しい捉えかたをする
(Fox, R. G. 1991. Recapturing Anthropology: Working in the Present, Sante Fe: School of American Research Press.)
これが人類学者が常に考えていることで、私の足りてない脳みそでは文献を読むたびに常にハッとする。
延々と女子会をして、”わかるわかるー” ”なんやかんや無理じゃない?” とかいうのも好きだけど、その慣れあいとピアプレッシャーの先が晩婚化、晩産化からの不妊治療になるのだとした末恐ろしい。
BPS Research Digest: How women become "super-mothers" after giving birth through IVF
Mohammadi, N., Shamshiri, M., Mohammadpour, A., Vehviläinen-Julkunen, K., Abbasi, M., & Sadeghi, T. (2014). ‘Super-mothers’: the meaning of mothering after assisted reproductive technology Journal of Reproductive and Infant Psychology, 33 (1), 42-53 DOI:
Takie, Sugiyama,