Egg freezing?

元OL、独身アラサー、社会人類学専攻大院生が卵子凍結保存を本気で考えるブログ

イクメンっていうけど多分それ親として普通のことなんじゃないの?3894本の新聞記事分析からみる”理想の家族”。

育メンっていうけどさ、育児するのは親だから別に普通のことでしょ。

 

って意見最近よく(女性側から)聞くな〜と思ってたら、どうやってその言葉が日本社会に浸透していったか、”いくめん”という言葉をどう理解しているのか、というのについてマクロレベルとミクロレベルで書いてる論文に出くわした。

Kosuke Mizukoshi, Florian Kohlbacher & Christoph Schimkowsky (2015): Japan's ikumen discourse: macro and micro perspectives on modern fatherhood, Japan Forum,

超最近や〜。バリキャリのことを主に考えてはいるものの、こういう言葉からも家族像とか考えれるかもしれないという淡い期待。

 

社会的、包括的にみてみる件。

イクメンという言葉は2006年に登場、2010年に流行語トップ10に選ばれてどかーんと広まったわけですが、厚生労働大臣の長妻昭(ながつまあきら)さんが、大体的に広めたいっていったのが大きいみたいですね。知りませんでした。無知。

厚生労働省にとってはイクメンプロジェクトはワークライフバランスを考え直そう、とい意図があり、経済産業省としては、働く女性をサポートして危惧される労働力不足に備えようとか、内閣府にとってはジェンダーイクォリティ、そして少子化対策の一環というような色々とお国の気持ちが乗っかっているという。

 

こちらの論文の著者たちはオンラインデータベースで検索できる新聞を検索して出てきたイクメン(or育メン)が使われている記事 1903本(2008-2014年)と,家族サービスの記事1991本(1979-2014年)を分析したそうで。地道だったでしょうに。お疲れ様です、ありがとうございます。

 

家族サービス

1979-2014年にかけて、じわじわじわり。

1985年の男女雇用機会均等法、ないし1980年代の週休二日制度の導入とリンクしているという話らしい。

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そしてこちらが育メン

あっぱれ、突然の登場なのであります。これは前述のように、家族サービス同様、政治が絡んでいます(言い方悪めだけど)。最近はインターネットの力もとんでもないですから、それも影響していますけどね。

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もうちょっと個人レベルでみてみる件。

新聞だけでは飽き足らず、今度は2013年4月から7月にかけて東京で、もうすぐ出産を控えている夫婦13組にインタビューをしている。このインタビューってイメージする分には楽しいんだけど、実際は終わってからレコードしたの書き起こして、分析して等々、めっちゃめんどくさいと思いますわ。

 

結論としては、社会的に見て認知度は「もうみんな知ってるレベル」に到達してる一方で、実際個人レベルではよくわかってない。という感じ。

 

(1)育メンに対するネガティブなイメージ持ってるパターン

33歳、結婚6年目、共働き、奥様妊娠4ヶ月

私は男性が完全に子育てに参加して、奥さんをいつも助ける、なんてこと現実的だとは思わないし、実際にそんなことしている人なんでどのくらいいるんだろうか。言葉だけが先走っているように思う。”育メンはかっこいい”とか”育メンになりたい”とかは思わない。

 

(2)育メンの具体的な役割、定義がイマイチわかっていないパターン

28歳、結婚4年目、共働き、奥様は妊娠8ヶ月

積極的に子育てに関与したいと思っているけど、それを育メンと呼ぶのかどうかわからない。多分育休とるひとのこと?少なくとも自分はそういうイメージを持ってる。でも僕はそれはしない。家事や出来ることをしたいと思う。

(3)育メンかどうか、をラベル付けされることを考えるパターン

35歳、結婚5年目、共働き、奥様妊娠8ヶ月

育メンっていう言葉が好きじゃない。でも家族の面倒は見たいと思うよ。周りから育メンって見られるのはいいことな気がするから、そんな育メンになりたい。

 

(4)ラベル付けされることは気にしてなく、育メンを何か任命されてするようなものだと考えていないパターン

38歳、結婚3年目、自営業、奥様妊娠5ヶ月

育メンになりたいって普通のことなんじゃないですか? 

 

 と、まあだいぶ省いてますけど、いろんな反応があるのですね。いろんな反応があるのだけど、やっぱり社会的な、もやはブームみたいになってるこの言葉と実際にはかなり乖離がないでしょうか??というのがこの論文の主張。

さらに加えると、「"naturalness of such fathering practices"、"父親としてする当然のこと"、というのに育メンというラベルは不必要である」と思っていることが、インタビューした男性に共通して見られることだった。だからそういう意味では、冒頭に書いた育メンっていうけどさ、育児するのは親だから別に普通のことでしょ。”ってのは案外男性も思っていることなのかもしれませんね〜。ただ、これに関しては出産直前のもうすぐ父親になる男性にインタビューしてるから、前向き度が高めだと思う。

 

まあ、育メンだとかなんだとか言う前に親として当たり前だろ!とかいう批判的なことはよく聞くのだけど、個人的には、長らく続いてきた”家族サービス”という枠を男性も抜け出しているところがここ最近の大きな変化だと思う。堂々と家族サービス、なんかいうと、なんか”してやってる感”みたいなのでるから、ごってごての昭和の男性たちも言いにくくなってるんじゃないだろうか。これはまさにフーコーがいう"discourse theory"。権力が知識を生み出し、知識が言葉となり、人はそれに行動や思考をコントロールされるみたいな話。政治と絡んでいます、と最初に言ったけどまさに。(となると、卵子凍結保存する女性や超バリバリキャリアウーマンも同じようにトップダウンでいくほうが、受け入れられる範囲は大きいのかもしれません。権力様様、メディア様様。)

 

働きながら子育てしている女性たちが色々言いたい気持ちはわかるのだけど、未だに寿退社うらやましー!とか、やっぱ養って欲しいよね、とか言ってる女子もウヨウヨ残ってるわけで、少なくともそんなこといいつつ、家事も手伝って欲しいし、育児も参加して欲しいなんぞいってる女子がいたらそれは反省もんです。それだとただの「理想の男性像だけ西洋かぶれマン」でっせ。

(参照:自分で勝手にバリキャリって思ってるだけなんじゃない? - Egg freezing?

 

時代が変わってきているから理想の男性像も、家族の形も変わってきているのは確かだけど、たった5年でこんなに育メンとかいう言葉がこんなに浸透して考え方も変わってきてるんだから、15年後の理想がまた全然違うなんてことは大いにあり得るわけで、個人的には理想とかいうのは自分で決めればいいし、今持ってる自分の理想が対して理想じゃないことなんてたくさんあるから、ある意味、今思っている理想のものを捨てる勇気って必要だと思うわけです。

 

社会に踊らされて男性が育休なんてとって、アムロちゃんの眉毛が一生流行ると思って超細眉にするのと一緒かもしれへん。結局あのとき、育休なんてとったかキャリアに支障きたした、なんてことは(もちろん企業に問題はあるけども)、眉毛生えてこなくなっちゃった、みたいな話と同じになるかもしれへんで。違うか。

 

 

今日もイギリスは暗いのでプーケットの写真みて元気出します。でわ。

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